機能のみを追求したレーシングホイールは確かにある。他の全てを我慢できるのならデザインのみで選んでもいいだろう。だが、デザインと機能、その両方を極めたホイールのいかに少ないことか。人は何かを我慢することで真の満足を得られるのであろうか。「プロファンド」で鍛造3ピースの頂点を極めたファブレスが1ピースホイールに求めたのも全ての事柄。
鍛造並に耐久性に優れ、鋳造並にデザイン性に優れる1ピースホイール。この相反する不可能に近い試みをファブレスはやってのけた。妥協することなく機能性とデザイン性を追求し、たどり着いた結論が最新リム成形方法のMATプロセス(Most Advanced Technology)。鍛造2・3ピースホイールのリム成形方法であるスピニング製法を鋳造ホイールに応用した次世代のホイール製法である。このMATプロセスを施すことにより、材料の内部組織が大幅に変化。鍛造ホイールのみが持つ緻密で均一なアルミ組織、鍛流線(メタルフロー)の実現が可能となった。大幅な材料強度アップにより、鍛造並の強度と剛性を持たせることに成功する。理想に向けてひたすらに努力すれば夢はかなう。ファブレスはそのことを証明したかったのかも知れない。
「ジェネシス」にはファブレスがトップカテゴリーのレース活動において蓄積してきたホイール設計技術の全てをフィードバック。20、19、18インチと大口径化に伴うバネ下重量の軽減化は必須。MATプロセスによる材料強度の恩恵も受けて、リムの薄肉化を可能とした。従来のリム厚から1/3の薄さと聞けばその凄さが分かるだろう。
また、従来の鋳造1ピースホイールでは成し得なかったアンダーカットデザインも採用。2次加工の手間を惜しまず加工を施すことで、大幅な軽量化を実現。こうして、従来の鋳造1ピースホイールに対して実に40%もの軽量化に成功している。そして、スポーク裏にまでいたるアンダーカットが視覚的なボリューム感と美しさを加える。これは立体的な面構成を得意とするファブレスの思想とも合致する。
この最新の鋳造技術はデザイン面にも大きく貢献。先ほどのアンダーカットを含め、自由度は鍛造を凌駕する。放射線状の10本スポークはモータースポーツの正統派進化系。応力分散に優れるとともに、従来の逆ゾリデザインでは不可能とされたビックキャリパーにも対応する。もちろん、MAT製法によるスポークの薄肉化のメリットは計り知れない。また、センターキャップはロゴマークが施されたオーナメントをはじめ、リング、カバーに分かれた3ピース構造。カバー部分にはスポークの延長線上のデザインを施す。ノーマルリム形状でありながら視覚的に1サイズ大きく見せ、かつてないほど足元をスタイリッシュに飾ってくれるだろう。結果、意匠と機能のいずれも犠牲にしないファブレスならではの妥協を許さぬデザインが完成した。
もう迷うことはない、もう流されることもない。高強度、高剛性、超軽量、高感度デザイン、そして優れたコストパフォーマンス…。全てを満たし、頂点を目指す。